福祉コラム

歯抜けな話
半年ごとの里帰り中である。目的は歯の治療。日本人は世界一器用な国民、との思い込みが異常に強いのだろう。最近は英国人の歯医者にお目にかかることは少なくなったとはいえ、彼らの手にかかったら、口中血だらけにされる、という恐怖心が付きまとって英国ではどうしても歯医者に行けない。あの無骨な手は日本人の華奢な口には合わないに決まっている。兎に角、信用できないのである。
もうすぐ日本、という安心感がそうさせたのだろう。出発直前に前歯で固いアイスクリームを齧るという失態を演じてしまった。何と、前歯がポロリと口から弾け飛んだのだった。翌日は、生憎、福祉部のMさんのご主人が運転を申し出てくださって、寝たきり高齢者のお見舞いが予定されていた。できるだけ口を開かないよう、すまし顔で上品に振る舞った。ところが、ランチをご一緒することになり、もうこれまでと観念した。英国人のご主人との間で、福祉部のボランティア活動が話題になった。みっともなさに加え、前歯のない不便を思い知ったのである。中学に入学したころ、ネイティブの英語教師に散々発音を訓練された記憶が突如としてよみがえった。「V」「R」「L」の発音は日本語にない。読者のみなさんは、在英が長いから「V」は、前歯で下唇を軽く噛んで発音することはご存じだろう。ところがどっこい、前歯が一本不足すると、空気がスース―抜けて、「V」の音が「F」になってしまうのである。ボランティアは ホランティア、愛はラブでなくラフになってしまう。笑うに笑えない「歯抜け」な経験だった。余談だが、通常の治療とは異なり、前歯は隣の歯との色合わせが必要ということで高額な治療費が請求された。治療中の今、加齢の悲哀をしみじみと感じている。(T)
『2015年12月突然の孤独死をされたタキコ・スチュアード会員のご妹様からのその後の報告です』
福祉部 合掌
亡き姉の散骨式を終えて
JAの皆様、大変ご無沙汰しております。亡き姉のお別れ会に際しましては、多くのご参加をいただきまして、誠にありがとうございました。
この4月20日、「富士山の見える相模湾に骨を撒いて欲しい。」という姉の強い遺志に従い、たまたまお里帰り中の福祉部の竹中様、飛田まゆみ様と姉上のお三方にご参加いただき、散骨式を無事に終えることができました。昨日とは打って変った晴天、波静か、富士山に見守られる、まさに最高のコンディションの中、船に揺られて、相模湾の沖合に指定された散骨地点に到達。しめやかに散骨、献花、献酒、黙祷をささげましたことを報告させていただきます。 鈴木すえ子