二水会

● 7 月二水会の報告●

講師:栗田路子様 演題:「BREXITとコロナ禍を通して、見つめてきた EU と国の今」 参加人数:75 名

ベルギーに在住され、ジャーナリストとしてご活躍されている 栗田さんを講師にお招きしました。オンラインでベルギーと つながることに感謝しながら、EU 側から見た英国の興味深 いお話を伺いました。 シェフィールドの大学で学ばれた経験 や、娘さんがスコットランドの大学に進学されたこと、また、 英国人の友人が多いことや、ベルギーから英国への入国に際 してイミグレーションの手続きがなかったことに感動したこと など、英国に親しみを持たれているエピソードをご紹介いた だきました。 お話の中で特に個人的に目からウロコだったのは、ワクチン の開発が英米だけが先行した訳ではないという事実でした。 少し陰謀論めいたことを思っていた僕は、英米のワクチン開 発がとても早かったのは、その技術を長い間進めていたから で、中国から発生したのも米国で行われていた遺伝子組み換 えによるウイルス研究と関係があるのではないかと、思ってい ました。講演を聞いてわかったのは、ファイザーのワクチンは ドイツのバイオンテックという小さなリサーチ会社が開発した もので、創始者はトルコ系移民夫婦であること、ジョンソン・ アンド・ジョンソン社のワクチン開発はベルギーのヤンセン社 で行なわれたこと、ということでした。 これらの研究者たちの間では、中国がシークエンシング(DNA 配列情報)を公開した直後の 2020 年 1 月に 20 日には、メッセンジャー RNA を使用してワクチンの開発ができることを発 表していたというお話がありました。2020 年 3 月時点でバイ オンテック社とファイザー社との間でワクチンの大量生産の 契約が締結されたということで、3 月といえばロックダウンが 始まった月だったことを考えると、一般市民である僕達が目 にするニュースの前に物事は進んでいたんだ、と不思議な感 覚にとらわれました。 ワクチンの開発については、アメリカではファイザー社やモデ ルナ社が英雄視され、フランスでは、モデルナ社やアストラ ゼネカ社の社長はフランス人であることが取り上げられ、ドイ ツではバイオンテック社が英雄視されていることなど、各国 各様の報道がされているという話を聞いて、インターネットで 何でも情報が入手出来る世の中にあって、まだまだ言語の壁 や、大手メディアの影響力が大きいことを感じました。考えて みれば、僕自身 YouTubeで情報系の動画を毎日チェックして いるのですが、登録しているのは、ほとんど全て日本語のユー チューバーで、英語の登録は動物関係ばかりだということに、 ハッと気付きました。。。動物の可愛さは国境を越えるんです ねー、と言っている場合ではありませんっ! アストラゼネカ社のワクチン製造に英国優先条項があったこ とや、英国変異株(アルファ株)の発表が、Brexit との交渉 の関係で意図的に遅らされたと考えられていることなどのお 話があり、ワクチン・ナショナリズムという報道があったこと を思い出しました。EU の医薬品庁は Brexit によって、ロンド ンからアムステルダムに移転し、その初仕事がワクチンの承認 (2020 年 12 月 21日)だったそうです。Brexit の交渉は、すっ たもんだありましたが、合意なき離脱(No Deal Brexit)を覚 悟した最後の最後、昨年年末のクリスマス直前に合意が行わ れて今に至っています。コロナウイルスによるロックダウンが 長く続いていたため、その影響がよくわからないというのが 個人的な印象です。コロナウイルスの「満ち潮」が引いたとき に、どのような景色が見えるのか、今後いい話が出て来るこ とをを期待したいと思います!(伊東)

※8月の二水会はお休みです。